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私たちの心が、旋律になっている 小野田隆雄
小野田隆雄

7月1日に、神奈川フィルハーモニー管弦楽団による「須賀田礒太郎の世界」を聴く機会に恵まれた。それは、思いも寄らぬ楽しい巡り会いのように思えた。何と巡り会ったのかと言えば、私が幼少期から青春の時を過した北関東の風景や匂い、祭の音などである。 須賀田さんの音楽は、オーケストラにより演奏されながらも、心に響いてくるものは、どこか東洋的な、という以上に日本的な旋律が想起する自分自身に語りかけてくる物語だったように感じられた。須賀田さんがお過ごしになった疎開先の栃木県田沼の地が、私の育った栃木県足利の地と、さほど離れていないからなのだろうか。冬はカラッ風、夏の夕立、春のまばゆいばかりの花々、秋の高い空・・・・・・そのようなイメージの断面が、次から次へと私の耳で踊り続けたコンサートだった。 例えば、私がいちばん好きになった東洋組曲「沙漠の情景」は、イスラムの砂漠の民のメルヘンであるが、巡禮たちはいつのまにか、日本の雪の中を歩み去る旅人に変っていき、兵士たちの乗る馬たちのひづめの音や武具が作る音は、無数のケヤキの落ち葉が舞い散る音に想われてきた。とりわけ第四楽章の東洋の舞姫は、遠い記憶の中で、夜桜の下の舞台で踊る村娘たちとそれを見つめていた自分の姿に重なっていった。それでも、心のどこかに、組曲を聴いているあいだはずっと、砂漠を吹く風の音を聴いていた。刺すほどにまたたく星の声を聴いていた。世界はアラビアだった。須賀田さんの曲は、いつも管楽器の音が、私たちのイメージをリードしてくれた。その旋律の美しさに魅せられた。素敵な横浜の夜になったコンサートだった。


●小野田隆雄さんプロフィール 
エフクリエイション株式会社 クリエイティブディレクター
・主なコピー作品:「ゆれる、まなざし」「夏ダカラ、コウナッタ。」「さびない、 ひと。」「恋は、遠い日の花火ではない。」

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