試斬居合道 日本武徳院 Nihon Butokuin
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美としての試斬居合道 中村隆夫(多摩美術大学教授、美術評論家)
美としての試斬居合道 中村隆夫(多摩美術大学教授、美術評論家)
 
 「日本武徳院」の剣士・師範の黒澤雄太は、「武士道とは、美意識である」と語る。根性物語でもなく、体育会系の乗りでもなく、彼が追求する「美意識」 とは一体何のことなのだろうか。日本武徳院のホームページには次のように書かれている。「肉体と精神は同じ人間のものにもかかわらず、常に互いに変化 し、影響しあい、ともすると均衡(バランス)を失いそうになります。刀を持つ、刀で斬るということは、己の足元を否応なしに見つめさせられる所業です。 凛としておごらず、こだわりなく、自然体で何処にも力のはいっていないが、気息充実した姿」。
  黒澤雄太はかつてはロックバンドを結成し、写真のモデルにもなり、アイルランド人の血が八分の一入っている36歳の剣士である。極めて今どきの人である黒澤の美学は、単にファッショナブルであろうとすることではない。黒い袴と紋付きに着替えた道場での黒澤は、それだけで普段着姿とは打って変わって、 一層凛々しく気高い雰囲気を放つ。鏡の前で真剣を手にし型の練習をする。前へと踏み出しては刀を振りかざし、静かに後ずさりする。背後には門下生たちが 同じく真剣を振りおろし型の練習をしている。真剣を手にしているためか、彼の神経は前後左右に張り巡らされているのが、彼の身体から感じられる。彼が振 りかざす刀が風を切る音に、見ている私の背筋がぴんと伸びる。
  型の練習を終え、いよいよ仮標を斬る。居合道の流派の9割以上は実際には斬らないのだと聞く。ややもすると「型のための型」になってしまう。刀を振りかざすその先を視線が追いかける、型としての美しさがある。だが、実際に斬る者にとって視線は仮標にでもなく虚空にでもない、ある一点を凝視している。黒澤が仮標を斬るときのその視線には気迫が漲っている。
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