『自分と真剣に向き合う』
一般的に、「剣の道の修行」などというと、苦しいことや辛いことを必死に我慢して、眉間にしわをよせてするようなイメージがありますが、実はまったく違います。
本当はもっと楽しいものなのです。その楽しさは、自分自身の最も深い部分と刀との対話にあります。
つまり、刀を持つということは、否応なしに真実の自己と向き合うということです。真剣で実際に斬るとなると、なおさら否応なしに向き合わされます。刀から、己とは何者であるかということを問われるのです。
そして、真実の自己と真剣に向き合えば、いままで自分が知らず知らずのうちに溜め込んでいた先入観や思い込みによる妄想でがんじがらめにされていた不自由な自己が、その束縛から解き放たれ自由になっていきます。
それを頭の中ではなく、刀を持った己の身体と心を使ってするのが剣の道です。
ですから、真剣にやればやるほど、どんどん気持ちも楽になり、生きるのも楽になり、何ものにもとらわれない自由自在の境地に遊ぶ「遊戯三昧」となるのです。
<黒澤雄太/著 『真剣』 光文社より> |